SAMMU MAGAZINE 2026 Vol.6
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レストラン寿々木グリルチキン松尾駅前の商店街入り口に、昔ながらのレストランがある。趣のあるそのお店は「レストラン寿々木」。昭和27年に創業し、現在は3代目、貴志さんが店主を務め、2代目である父とふたりで店を切り盛りしている。蕎麦屋から始まり、父の代で今の洋食店に変わって、45年になる。ボクは今日のランチをここでいただくことにした。ボクは貴志さんおすすめの「グリルチキン」を注文した。テレビやラジオのBGMはなく、しんとした店内に貴志さんが厨房で調理する音だけが響く。やがて漂ってきた「グリルチキン」の香りと共に、ボクは心地のいい空気に包まれて、料理が運ばれてくるのを待つ。待っている間、厨房の中を覗くと、貴志さんは丸い鉄板で焼くチキンの焼き加減を、真剣な眼差しで見ていた。その目配りと繊細な料理の所作に、ボクは貴志さんの「グリルチキン」への真髄を垣間見たように思った。出来上がった「グリルチキン」には、生野菜とポテトサラダが添えられ、貴志さん特製のデミグラスソースがたっぷりかかっている。それは、香ばしい香りと共に溢れ出る肉汁と、デミグラスソースのほのかな甘味が作り出す至福の美味しさだった。ライスの皿に刻まれた「Suzukiya」の色褪せた文字に、店の歴史を感じながら、ボクは貴志さんの「グリルチキン」を堪能した。店内の壁に、古い新聞記事と海外の認定書のようなものが飾ってある。ボクがその記事を見ていると、貴志さんの父、和幸さんが、60年前に自身が民間の南極観測隊の現地料理人として赴任した時のものだと説明してくれた。それから、南極の話、南極へは自衛隊の船で行った話、スイスでの修行の話、そして食習慣の違いを実感した話、フランス料理はコースで食べないとわからないという話など、興味深い話を次々に聞かせてくれた。その時も厨房からは、貴志さんの仕込みや片付ける音だけが淡々と聞こえていた。松尾駅前の商店街の入り口にある昔ながらのレストラン「レストラン寿々木」。その静かに佇むレストランには、歴史に刻まれた物語と、そして極上の「グリルチキン」がある。 16もっともっともっともっとさんむさんむno.03

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