SAMMU MAGAZINE 2025 Vol.5
28/42

02山武×人生物語【×】 シュガリー西洋ねぎ冬になると、海からの空っ風に揺らぐネギ畑が、ここ山武の自慢の風景のひとつだ。そんな景色の中に、他のネギとは明らかに違う畑が存在する。それは通常のネギより遙かに太く、V字を描きながら幾重にも長い葉を伸ばしている。垂れ下がった葉先が醸し出すボタニカルガーデンな雰囲気に、誰もそれがネギとは思わないだろう。しかしそれは、れっきとしたネギ。遠路はるばるヨーロッパからやって来た西洋ネギ「リーキ(ポロネギ)」なのだ。寒空の下、リーキ畑をじっと見つめる男がいる。入社4ヶ月目にネギ担当を命じられ、今日までネギの生産と普及に情熱を注いできた、㈱エイチテクニカ、アグリ部門の中尾さん、その男だ。遡ること10年。建築業を営む㈱エイチテクニカは、アグリ(農業)部門を立ち上げ、ネギの生産販売事業「Sugary(シュガリー)=甘い」をスタートさせた。エンジニアから建築業界に夢を描いて入社したのに、まさか農業と二足の草鞋になるとは思ってもみなかったと、中尾さんは配属された当時の心境を振り返る。当然、農業経験もなければ知識もない。しかし、分からないことだらけというのは、何でも聞けるというメリットがある。そんなポジティブな中尾さんは、近隣の同業農家さんのアドバイスや、取引業社の協力に支えられながら、ネギに関する知識と経験を積んでいった。2年が過ぎた頃、中尾さんはたまたま西洋ねぎ「リーキ」を食べる機会があった。最初はその風貌にネギとは思わなかったが、主にヨーロッパで食され、近年では高級食材として日本のレストランなどでも取り扱われていると言うじゃないか。ならば周りがやっていない特徴のあるネギをやろうと会社を説得し、「リーキ」の生産に踏み切った。だがその後、普通のネギとは違う形状がもたらす難題に直面するとは、その時は知る由もなかった。生産スタートした「リーキ」は、海からのミネラル豊富な潮風を受け、順調に育っていった。しかし成長が進むにつれ、幾重にもなる葉の隙間に入った砂が、葉を傷つけてしまうという問題が発生した。ネギというのは、地中に埋めることで日光が遮ぎられ白くなり、糖度や美味しさが増していく。白い部分を適度に伸ばすため、収穫まで何段階かに分けて盛り土を繰り返していかなくてはならない。つまり、〝盛26中尾さんとリーキ

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る