SAMMU MAGAZINE 2025 Vol.5
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未来は︑おばあちゃんのごはんの中に友人に誘われ、「虹のいえ」のカフェ「mamacafe」のランチにやって来た。開店と同時に満席になるところを見ると、噂通りの人気カフェのようだ。ここ「虹のいえ」は、農園、稲作、養鶏を通して、「カラダに良いものだけで生活ができたら……」を目指し、野菜、米、卵、調味料のどれもが「虹のいえ」で作られたものばかりで、その食材を使った食事を定期的にカフェで提供している。オーナーの岡さんを中心に、食と健康に意識の高いスタッフが、野菜作りからカフェ運営までをこなしている。まさに地産地消であり、自給自足と言っても過言ではない取り組みが、「虹のいえ」で繰り広げられているのだ。運ばれてきたランチは、旬の野菜で彩られた華やかさの中に、どこか素朴で懐かしさを感じる料理ばかり。素材本来の味を大切に手間暇かけたシンプルな味付けは、どれも安心するおいしさだ。「虹のいえ」では、太陽を浴びて地上でなるものを「陰」、大地のエルギーを吸収して地中になるものを「陽」とし、料理をする上でこの「陰と陽」のバランスを大切にしている。それは自然の摂理を重んじ、自然の恵への感謝の気持ちが料理に込められているということだ。そんな「虹のいえ」の料理を、昔ながらの暮らしの知恵が生かされた「おばあちゃんのごはん」と、岡さんは表現する。岡さんの農家への転身は、健康と食への関心がきっかけだった。健康を考える上で、食の役割は大きい。「カラダに良いものだけで生活ができたら……」という思いは、当時から変わらない。農業への取り組みは、50年放棄された土地の開拓からはじまった。開拓とはすなわち土づくり。砂地だった荒地を、野菜が育つ農地へと生まれ変わらせなければならない。しかし農業経験のない岡さんにとって、その道のりは想像以上に難しく、折角育った野菜も、病害虫に見舞われることも多い日々が続いた。失敗と挑戦を繰り返す中、「炭素循環農法」と出会った。自然界にある木や落ち葉などの有機物から発生する微生物が作り出す栄養素を利用する農法は、その後の岡さんの農業を一変させることになった。「山に追いつけ、山を追い越せ」をスローガンに、岡さんはひたすら林道の落ち葉を集め、畑に撒いた。その地道な作業は、軽トラックで50往復にも及んだと言う。そうして3年が過ぎた頃、ようやく元気な野菜が実りはじめた。岡さんの努力が報われた瞬間だった。岡さんには農業をはじめた時から、「自分たちが作った農作物を使った料理を食べてもらいたい」という夢があった。それは亡くなった妻の夢でもあり、「カフェをやりたい」というのが口癖だった。ようやく農業も軌道に乗り、元気な農作物が収穫できはじめたことを機に、カフェ実現を決意した。スローガンは「口につっこむまで」。しかしここは千葉の最果ての地。どうやってお客さんを呼べばいいのだろうか。ここでしか得られないものとは何「太陽の匂いのする鶏」を使った「胃薬のようなカレー」15

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